2013年、チャンピオンズリーグ決勝は、ドルトムントとバイエルンのドイツ勢決戦になった。
ドルトムントは、ここ数年クロップ監督の下、飛躍を続けている。
毎年主力級の選手達が移籍してしまい、来期もゲッツェがバイエルンにいってしまう。
移籍に関して、選手の意思を尊重するコメントを残すクロップ監督。
ただ、手塩にかけて育てたチームから、才能あふれる選手達が出て行ってしまうことへの心境を語るシーンでは、とても残念な気持ちが伝わってくる。
素晴らしい才能をもった選手が、移籍先で能力を最大限発揮できない状況をみて、クロップ監督はそれを悲しむ。
彼は、情熱的で知的で創造力をもった監督である。
2010年から2年間ドルトムントでプレーし、リーグ2連覇に貢献した香川真司への愛情はその中でもひとしおのようだ。
マンチェスターユナイテッドで、ハットトリックを含め徐々に本来の輝きを放ちだしているものの、なかなか才能の全てを発揮しきれていない香川に対し、クロップはなんともいえない表情で愛情を込めて語っている。
香川の才能と人間性を高く評価しているクロップは、
「香川真司は世界で最高の選手の一人だが、マンチェスター・ユナイテッドでは20分間しかプレーしていない、しかも左ウイングで! 心が痛むよ。本当に涙が出そうだ」
「セントラルMFこそがシンジのベストポジションだ。彼は攻撃的MFとして、私が今まで見てきた中でも最も優れた得点嗅覚を持った選手の一人だ。だが日本の人々の多くにとって、マンチェスター・ユナイテッドでプレーすることにはドルトムント以上に意味があるようだ。彼が去る時には、お互いの腕の中で20分間泣いたよ」
と、語っている。
私はクロップの語ることにとても共感する。
香川の情熱とインテリジェンスあふれる才能は、この動画をみればよくわかるだろう。
香川にとってもクロップ監督との出会いは、とても素晴らしく得がたいものであっただろう。
ドイツでは全く無名であった日本人の若者の才能を見抜き、レギュラーに抜擢し、中心選手として信頼し、見事な貢献を引き出した。
香川自身の適応力と能力、人間性がその根底にあることは間違いない。
ただ、元々、J2で得点王になり、日本においてはその才能が認知されていたが、海外の舞台で香川の能力を遺憾なく発揮させきれる環境を整えたのは、クロップ監督の手腕である。
クロップの掲げる戦術と、香川のプレースタイルがピッタリとはまった結果、香川真司というフットボーラーは、ドイツ中の驚きをもたらした。
香川はよくインタビューで、「イメージどおりのプレーが出来た」というコメントを残すが、彼が自分に自信を持ち、クロップ監督がチームとして目指す方向性をしっかりとイメージできているとき、彼のプレービジョンが導き出され、体が反応する。
彼のテクニックやインテリジェンスは、そうした瞬時の判断の中でこそ活きてくる。
流れるような攻撃の中で、ハイテンポにチャンスを演出することができる。
イメージの共有、そこから生まれる情熱、そしてそれを具現化する力。
香川もクロップ監督も共に持ち合わせたからこそ、強いドルトムントが躍動できた。
もちろんチーム全体の献身と持ち味を十分に発揮できたからこそだ。
バイエルンを2年続けて王座から引きずりおろしたドルトムントの中心選手に、マンUのファーガソン監督までもが夢中になった。
豊富な運動量、インテリジェンスあふれたプレービジョン、スペースを見つける才能、得点感覚、シンプル且つハイレベルなボールタッチ、敏捷性、なにより彼の情熱。
香川の持ち味を遺憾なく発揮させたクロップ監督は、香川の第一の理解者であり、二人の師弟関係はチームが変わったといえ、色あせることはない。
なぜなら、彼らはイメージを共有することができたからだ。
共有するイメージを高いレベルで再現することに、この上ない喜びを感じた者どうしだからである。
そして、共に高い資質と人間性を認め合い信頼し合えた時間をもつことができたからだ。
鮮明なイメージは、情熱やモチベーションという感情を引き出し、そのエネルギーは行動へと結びつく。
そのような環境においてこそ、技やインテリジェンスが最大限に発揮できるのだと私は思う。
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